裸の息子が泡のお風呂に楽しそうに入っていた時、私は洋服を身にまといバスタブの横に座りスマホをいじっていた。

お尻に泡をつけた息子は、プラスチックの金魚をお風呂に入れて金魚すくいをしたいと言い出した。

「金魚すくいのポイがないからできないよ」とスマホをみながら対応する私。

すると息子は「青と黄色のがあるよ。風船を叩くやつ」と言って来た。

彼が言っているのは、バトミントンのラケットのことである。

水に浸かってしまうので本当は良くないのだが、私はリビングのおもちゃ置き場に置いてあったラケットを取って来て、息子に渡した。

「お父さんもやる?」そう息子が聞いてくるので、スマホをいじってても何も面白くないかと思い、スマホを洗面所に置き、金魚すくいをすることにした。

最初は息子の付き合いでやっていた。

しかし、息子があまりにも楽しそうにやっているので、私も本気でやってみることにした。

お風呂の泡で底は見えない。

プラスチックの金魚は泡で見えないわけだ。

その見えない金魚を、パトミントンラケットですくわなければいけない。

これが意外にも面白い。

多くの金魚を取ったほうが勝ち、というルールだ。

私はかなり本気になってバトミントンラケットで金魚をすくい始めた。

息子も負けじと金魚をすくう。

コップに入った金魚をみると、私のも息子のもほぼ同じ数だったように見えた。

金魚の数を数えた。

一匹、二匹、三匹、息子と私の声が、湿ったお風呂場で響き渡る。

いつの間にか、匹で数えられるようになっている息子。

こんなことで感心してしまうのは、親ならではの特権であろう。

結果は14匹と11匹で私の負け。

得意げな息子は、もう一回やろうと言って来た。

私も、喜んで二回戦に突入した。

スマホをいじっているよりも楽しいのは明らかだった。

しかし、息子はルール違反をした。

私がラケットだけを使っていたのに、彼は手を使ったのだ。

結果として、彼のコップには20匹の金魚があり、私のコップには5匹のみ。

私たちは数え始めた。

1匹、2匹、3匹。。。

私は、ここで考えた。このままルール違反をされて負けるのも癪なので、金魚の数え方を変えてみよう、と。

通常、1匹、2匹と金魚を並べていくだけなのだが、私は、1匹目に置いた金魚を、再度手に取り、5匹目の横に置いた。それを6匹目として数えたのだ。

そして、2匹目を動かして7匹目とし、3匹目を動かして8匹目とした。

すると、私は何なりと息子の20匹より多い数を数えることに成功した。

合点が行かないのは息子であった。

何かがおかしい。でも何がおかしいのかがわからない、彼の顔は物語っていた。

お父さんの方が多いから、お父さんの勝ちだね!そう伝えると、息子はもう一回と言って来た。

結果は同じく、私が5匹程度だったのだが、また数え方のトリックをした。

すると、じーっと私の数える金魚を見つめる息子。

自分の金魚の数を数えながら、何かを理解したらしい。

お父さん!1回触った金魚は、動かせません!と忠告して来た。

あれ?おかしいなぁ、ととぼけるしかない自分。

ただのお風呂場での金魚すくいであった。

しかし、ただのお風呂場での金魚すくいが、貴重な思い出となる。

バトミントンラケットでの金魚すくいに楽しさを覚え、息子の数え方に感心し、息子が自分のズルに気づく。

「僕なんかいなくても楽しめるよ」洗面所に置いてあるスマホは、そんなことを語ってくれていたのかもしれない。