私は、NHKの「エマージェンシーコール」という番組が好きで、さまざまな人生模様を見ながら「世の中には本当にいろいろな出来事があるんだな」と他人事のように思っていました。

しかし、まさか自分が911に電話することになるとは思いもしませんでした。

ポートランド郊外、シアトル郊外、バンクーバー・キャマスWAにて巣鴨アドバンススクール(学習塾)とビーバートンにて巣鴨キッズ(幼稚園)を運営しています、みとのやです。

それは、ここオレゴン州ポートランドにて、明日は雪との予報が出た前日の夜のことでした。

天気予報では雪のため、なるべく外出は控えるように、とキャスターが伝えていました。

息子は「どうか雪が降りますように」と現地校がお休みになることを願い眠りについていました。

一方、娘はお昼頃から熱はあったのですが、普段通り、眠りについていました。

そんな中、私は夜遅く、いつものごとく自分の部屋で日記を書いていました。

すると、突然、妻の叫び声が聞こえたのです。

「娘がけいれんしてる!」

慌てて娘のもとへ駆けつけると、彼女の体はヒクヒクと引きつっていました。

私たちはすぐに、かかりつけのクリニックに電話をして指示を仰ぎました。

しかし、なかなかつながりません。

ようやくオンコールドクターにつながり、けいれんのことを伝えると、即座にこう言われました。

「すぐに911に電話して!」

その時点で娘は少し落ち着きを取り戻していたため、私たちは迷いました。

「今はけいれんしていないのですが、本当に911にかけるべきですか?」

しかし、ドクターは強い口調で 「今すぐ!911よ!」 と繰り返しました。

そして、人生初の911コール。

オペレーターに住所を伝え、状況を説明していると、驚くほどの早さで救急隊が到着しました。

わずか5分ほどだったと思います。

幸い、救急隊のチェックの結果、娘の状態は安定しており、緊急搬送の必要はないとのこと。

ただし、「もしまた痙攣を起こしたら、すぐに911に電話してください」 と言われました。

私たちはホッと胸をなでおろしましたが、ふと考えました。

「もしこれが明日の雪の中だったら…?」

そう思うと、ゾッとしました。

翌日、再び悪夢が訪れる

そして、その「もし」が、現実になったのです。

次の日の朝、雪は予報通り降りました。現地校もお休みとなり、息子は大喜びです。

娘も昨日の痙攣が嘘のようにキャッキャッしています。

ただ熱はまだあり、念の為クリニックにも行きました。

ドクターからももし次に痙攣があれば、911してと言われました。

そして、その日の夜。

まさかの状況が訪れました。

突然、妻の叫び声。

「また痙攣!」

私は慌てて娘を見ると、昨日とは様子がまったく違いました。

痙攣のスピードが昨日の比ではないのです。

右半身が完全に麻痺し、目もうつろ。

これはただの痙攣ではないかもしれない——そう思った私は、すぐに911に電話しました。

しかし、その日は大雪の日 でした。

前日とは違い、救急車はすぐには来ません。

私たちは不安でたまりませんでした。

時間だけが過ぎていく中、娘の右半身は依然として動かないまま。

最悪の事態が頭をよぎりました。

もし、最悪のことが起きてしまったら。

◆雪の中、救急車を待つ

ようやく救急隊が到着しました。

しかし、大雪の影響で、まず来たのは消防士 たちでした。

消防士も救急対応を行うことがあり、彼らは救急隊と連携を取りながら、娘の状態を確認してくれました。

しかし、彼らの顔には少し困惑した表情が浮かんでいました。

そして、今回は前日とは異なり、救急車での搬送が決定。

救急車も到着。

妻が娘に付き添い、病院へ向かいました。

妻によると、救急車は雪の中をゆっくりと進んでいったそうです。

この間にも、救急隊の方々は、坐薬で熱を落ち着かせてくれたようで。

病院に到着後、しばらくすると、娘の麻痺はいつの間にか消え、少しずつ体を動かせるようになっていました。

私は、息子を起こすべきか悩んでいた

一方、私は家で迷っていました。

「息子を起こして病院へ連れて行くべきか?」

息子は消防士たちが来て大騒ぎしている中でも、ぐっすり眠っていました。

ただ、ER(救急外来)は過去に一度だけ経験があるのですが、とにかく待ち時間が長い。

私と息子が病院に行っても、何もできないだろうし。

悶々としながら、妻にメッセージを送るも、返信なし。

私はつい、最悪の事態を想定してしまいました。

◆雪道を走るための準備

いざ病院へ向かおうとすると、ひとつ問題がありました。

「車に雪用のタイヤをつけていない…!」

仕方なく、タイヤチェーンを装着しようと外に出ましたが、手はかじかみ、久しぶりの作業でなかなかうまくいきません。

そこでふと思いつきました。

「ガレージに車を入れてから作業すればいいじゃないか!」

焦りすぎて、こんな簡単なことさえ思いつかなかった自分に苦笑しながら、YouTubeの動画を参考に、なんとかチェーンを装着。

ようやく息子を起こし、時速20マイル(約32km) という超低速で病院へ向かいました。

ERでの診察、そして安堵

雪道のため、道路はガラガラ。

高速道路ですら、ほとんど車がいませんでした。

こんなことはコロナ以来でしょうか。いえ、コロナの時でさえ、高速に車は走っていました。

無事に病院に到着し、ERへ向かうと、そこには元気そうに座っている娘と、それを抱きしめる妻の姿がありました。

妻も、私と息子を見て安心した様子でした。

娘は脳波の検査などを受け、結果的に大事には至らず、約3時間後に退院。

帰りもまた、時速20マイルで帰宅。雪の中、ゆっくりと静かに車は進みました。

家に着いたのは、深夜3時。私たちは皆、倒れ込むように眠りました。

人生は想定外の連続、だからこそ準備を

まさか自分が911をかけるとは思わなかった。

まさか雪の中、運転することになるとは思わなかった。

人生とは、そんな想定外の連続 なのかもしれません。

だからこそ、いざという時のために、タイヤチェーンなどの準備は怠らないことをおすすめします。

最悪の事態を想定して。

そして何より——

家族が無事でいてくれたこと、それが何よりありがたいです。

知っておくと良いこと

  • 熱性痙攣は、乳児の7%が経験するものらしいです。多くは生後3ヶ月から3歳までに起こしやすいそうです。
  • 熱生痙攣のことを、febrile seizureと言います。seizure(スィージャー)でもOK
  • ドクター曰く、高熱というよりも、急な熱の上昇によって起こるそうです。
  • 痙攣が起きたら、気道を確保して、顔を横向きに寝かせましょう。
  • 部屋の窓を開けて、室温を下げましょう。←私たちはこれを怠っていました。
  • 子供の服を脱がせて、体温を下げましょう。←これも私たちはできてませんでした。
  • 痙攣が5分以上続くようでしたら、911しましょう。
  • また痙攣の様子を動画に撮っておきましょう。←2回目の時は動画撮れていたので、話がスムーズでした。
  • 救急車で運ばれなかったとしても、その日のうちにドクターに診てもらいましょう。
  • そのためにもファミリードクターはつけておきましょう。

また、アメリカの救急車は高額で有名ですので、救急車の請求が届き次第、こちらでも共有いたします。

保険がある程度カバーしてくれるはずですが、ドキドキです。

余談

2日連続して起こった娘の痙攣でしたが、1日目の痙攣の時にこんなことがありました。

救急隊員が家の前に停めた救急車から駆けつけて、家の中に入ると。

「Where we’re going?(どこに行けばいいですか?)」

と聞かれました。

普段なら何の問題もなく理解できる簡単な英語のはずでした。

しかし、私は完全にパニックになっていたのでしょう。

わたしはこう返しました。

「I’m good.」

…意味が分かりません。

中学一年生の英語の教科書じゃあるまいし。

How’s it going? と聞かれるわけないし。

トレジョのレジの会話じゃないし。

娘が倒れてるのに、I’m goodなんていう父親は最悪だし。

私はすぐに「Upstairs(2階です!)」と言い直しましたが、娘が痙攣している中で「I’m good」と答えてしまった父親…

人はパニックになると、こうなるんだな、と改めて思えた出来事でした。