「万引き家族」、残念ながらアカデミー賞とはなりませんでしたが、アカデミー賞にノミネートされてしまうのもうなづけるいい映画です。

私にとってのいい映画とは、見終わった後に、色々と考えさせてくれる映画。

今まで持っていた概念をくつがえしてくれる映画。

そういう意味では、是枝監督は、毎回毎回、私の固定概念をくつがえしてくれます。

いくつかアメリカメディアのレビューを紹介しまして、最後に個人的な感想を述べたいと思います。

アメリカメディアの記事

まずは、是枝監督のアメリカメディアの記事をいくつかピックしたいと思います。日本語訳もつけました。

まずはLAtimesから

In some ways, it makes more sense to describe a film like “Shoplifters” by what it doesn’t do as much as by what it does. It doesn’t oversimplify, it doesn’t overemphasize obvious points, it doesn’t hit viewers over the head.


「万引き家族」は何をしたかではなく、何をしなかったか、で表すことができる。単純化するわけでもなく、強調するわけでもなく、視聴者に衝撃的なことを伝えるわけでもない。

Instead, aided by sensitive, empathetic acting, Kore-eda uses a quiet, humanistic touch that moves without smothering, that enables us to see his characters as whole people and to understand the difference between what society says it values and what it actually does.

その代わり、是枝監督は、静かに人道的なやり方で、私たちに映画の役者たちをみさせてくれる。社会が何に価値を置いていると言っていて、実際に何に価値を置いているかは違うのだ、と。

次はRolling Stonesから

Kore-eda examines the nature of what makes a family and how it stands up to poverty, prosecution and government neglect. It’s impossible to experience the deep-seated compassion of this film and not be moved to tears.

「是枝監督が伝えたかったことは、家族とは何か、そしてどう貧困に、政府の横暴に立ち向かうのか。この映画で涙を流さないことは不可能である」と。

次は、NYtimesのインタビューから

“I don’t portray people or make movies where viewers can easily find hope,” said Mr. Kore-eda, during an interview in his studio in the Shibuya neighborhood of Tokyo. “Some people want to see characters who grow and become stronger over the course of a film. But I don’t want to make such a movie.”

是枝監督「簡単に希望を持てる映画は作りたくなかった。映画の物語の中で、人が成長して強くなっていく映画は作りたくなかった。」

“It’s such a lie,” he added. “And I don’t want to tell a lie.”

「だって、それはウソだから。」

個人的な感想

*ネタバレありなので、映画を見たい方は、先に映画を見てください。

アメリカメディアからも絶賛されているこの映画。

こちらの家族、実は疑似家族なんですね。本当の家族ではありません。

お父さんもお母さんも、おばあちゃんも、子どもたちも、皆、赤の他人です。

でも、家族をよそおって一つ屋根の下に住んでいます。

今の法制度では、家族でないのに、未成年と他人である大人が一つ屋根の下に住むのはアウトです。

一人の女の子は実の家族からは虐待を受けていました。

その女の子を疑似家族のお父さんが連れてきてしまうんですね。

誘拐ですよね?

でも、虐待を受けてきた家族から逃げて、暖かい赤の他人の家に移る。

皆さんが虐待を受けている子を見つけたらどうしますか?

私だったら、どれだけその子が虐待を受けていたとしても、我が家に連れてきてしまおう、とならないでしょう。

警察か児童相談所でしょう。

でも、その連れてこられた子は、赤の他人の家で、家族の暖かさを知るんですね。

人のぬくもりを感じるんです。

ネタバレしてしまうと、結局その女の子は本当の虐待をしていた家族に引き戻されてしまいます。

親の意向というよりも、行政の力で。

本当の家族に引き戻されたあと、その子は、前の家族に戻りたいと訴えるんですね。

実の家族ではなく、赤の他人の家へ。

家族ってなんだったっけ?血の繋がりとか、何が家族なんですか?と改めて考えさせられました。

私が参加している毎年のクリスマス会(参考記事)、ゲイの両親が養子の子を連れているのをみて、あぁ、これも家族なんだな、と思いました。

血の繋がりって一体なに?という所に私は色々と考えさせられました。

誰の言葉だったか。こんなセリフが映画の中でありました。

「子どもには母親が必要、母親がそう思いたいだけ」と。

これは父親にも当てはまりますね。

だって苦労して産んだんですもん。苦労して育てたんですもん。

でも、それって親のエゴなのかな、と思ったりします。

別に父親も母親もいなくたって生きていきます。

いや、生きて行けるように育てるのが、親の仕事です。

とにかく、家族ってなんだっけ?と言うテーマを含め、本当に色々なことを考えさせる映画でした。

これはカンヌ国際映画祭で最高賞とっちゃうわけです。

あっぱれです!

まとめ

家族って何?血の繋がりってなに?

自分の家族はどうありたいのか?自分はどういう接し方を我が子にしているんだろうか。

そんなことを考えさせられる映画でした。

「万引き家族」という映画、家族とは何かを見直すという意味で、本当に見る価値No.1の映画だと思います。