先日、とある屋根の業者さんから見積もりをもらいましたので、その様子をご紹介。

今回は後半です。

ポートランド郊外、シアトル郊外、バンクーバー・キャマスWAにて巣鴨アドバンススクール(学習塾)とビーバートンにて巣鴨キッズ(幼稚園)を運営しています、みとのやです。

前半の要約

中古で買った我が家。

その屋根の張り替えはいつ行われたのか分からず。

そろそろ交換しないとダメかな、と思っていたところに、ドアをノックしてきた屋根の業者さん。

若いお兄ちゃん、ラガーマン、クマさんが家を訪ねてきました。

前半を読まれていない方は、ぜひ前半から読んでいただけると、流れがつかめるかと思います。

前半は ↓ をクリックください。

ラガーマンの先制攻撃

ラガーマン、クマさん、私と妻、4者の思いが交錯するダイニング。

まずはラガーマンが口火を切ります。

「それでは、まずは屋根とは何かという説明からするよ」

屋根とは何か?

何か哲学の授業でも始まるのか?と思った私。

生きるとは何か?死とは何か?そして、屋根とは何か?

屋根とは何だろう?

屋根って屋根じゃないのか?

屋根は実は屋根じゃないのか?

屋根が屋根じゃなかったら、この家を守ってくれているのは一体何なのか。

私の頭の中はハテナマークでいっぱいになりました。

ラガーマンはそんな私の疑問に答えてくれました。

「屋根は、この3つから成り立っています。」

あ、哲学の授業ではないのね、私は現実に戻されました。

「まずはアスファルトシングル、それの下に防水シート、シートが貼られる板。以上の3点となります。まずはアスファルトシングルについて。。。」

それは、まるで高校時代の英文法の授業。

やけに説明が長ったらしく。

私の意識はどこか遠くに行っていました。

ラガーマンの肩越しには息子がいました。

おもちゃのシンカリオンを真剣にいじっている息子。

6歳児を羨ましく思っていました。

「以上で屋根の説明となりますが、何か質問はありますか?」

ふと気づくと、講義は終わっていました。

私はぼーっとしていたので、全ては右から左にスルスルと流れていっただけなのでした。

私はふと疑問に思いました。

「屋根が3つから成り立っていると言っていましたが、その3つとは一体なんでしょうか?」

と明らかに話を聞いていなかった人がする質問などできず。

あとで妻から聞けばいいや、と思っていました。

そんなことはつゆ知らず、ラガーマンは続けます。

「それでは、屋根とは何かが分かったところで、他の屋根業者さんと私たちの屋根の違いについてお伝えします」

自信満々です。

上場企業の役員会議で出てきそうな自信満々なプレゼン。

何なら部屋を暗くして、プロジェクターでも使いますか?というほどに堂々としたプレゼン。

しかしここは、家のダイニング。

その自信満々な感じは、我が家のダイニングにはちょっと必要ありません。

なんでも彼らの会社が提供している屋根はowens corningと言って、非常に質の高いものらしく、オレゴンでも4社ほどしか契約を結んで提供している所はない、とのこと。

その4社がどこなのかググりたかったのですが、私は携帯が視界にあることを確認しただけで、聞き続けました。

「屋根といっても、どこも同じものを提供しているわけじゃないんですね。」

妻が絶妙な返しをします。

それに気を良くしたのか、ラガーマンは勢いよく答えます。

「なにせ僕たちの屋根の保証は25年。それは相当な自信の裏返しだと思うよ。」

なるほどね。屋根の材質も高く信頼できるんだね。

私たち夫婦は本当に心からそう思っていました。

そして屋根の質の高さを述べた後、スタッフのレベルの高さも伝えてくるラガーマン。

何でも、他の会社は、仕事がある日に日雇いの人たちを集めるらしく。

ラガーマンの会社はそんなブラックなことはしないそうです。

何だか、このラガーマンの会社以外は全てブラック企業のような言い方です。

他の会社の屋根の質は低レベルで、日雇いの人をひどい扱いで利用している、と。

既に時は50分ほどが経過していました。

ラガーマンは彼の子供の話を交えながら、上手に話を進めていました。

私は教育者としても、その話術の巧みさには感心するばかりでした。

「息子さんは何歳なんだい?よく食べるのかい?うちの息子はもう高校生なのだけれど、この前家族でピザを食べていたんだよ。僕と妻が一切れずつ食べて、ちょっと目を離したすきに、息子はピザの残りを丸ごと平らげていたからね。お互い子供を食べさせるのは苦労するね。はっはっは」と談笑。

屋根の質も良くて、職員もレベルが高い。

日雇いの職員も使っていない。。。

いいことづくめで、これは結構な値段がするのでは?と私は思っていました。

すると、ラガーマンはそんな私の頭の中を読んでいるかのようにこう言いました。

「それでは、僕は見積もりを作成するから、クマさんにその間、うちの会社の実績を紹介してもらおうとしよう。」

この営業マンは本当に上手。

値段が納得いくものなら、ここで決まりでしょ。

私も妻も本気でそう思っていました。

クマさんの攻撃

すると、今まで一言も喋らず、微動だにしなかったクマさんが動きました。

クマさんはあごひげにマスクをした状態です。

ただでさえ聞こえにくい低い声。

何やら写真集のようなもので、今までの会社の実績を見せてくれているようです。

パンフレットのようなものを見せながら、しゃべっています。

しかし、私たち夫婦はいったいこの人が何を言わんとしているのかは、聞き取れておりません。

「*&^%$#@!@#$^&&**」

うーん、まぁ、写真を見せてくれているだけだから、理解できなくてもいいか、と思いつつ。

「*&^%$#@!@#$^&&**」

まぁ、クマさんが何を言っているのかよく分からなくても大丈夫だろう、と私たちは思っていました。

写真に指をさしながらも色々と喋ってくれています。

「*&^%$#@!@#$^&&**」

よくわかりませんでしたが、日本人得意のうなずきと笑顔で乗り切ります。

そしてついにラガーマンの見積もりが出たようです。

ラガーマンは続けます。

「クマさん、ありがとう。ここからは僕が。」

クマさんも彼の役目が終わったようでホッとしているようでした。

「*&^%$#@!@#$^&&**」

最後に何か言っていましたが、でもやっぱり何をいっているのかイマイチ聞き取れません。

ラガーマンのトライ

ラガーマンは続けます。

「先ほども伝えたけれど、うちの材質は最高級で、うちのスタッフもレベルが高い。それだけやっぱり費用も高くなるかもしれない。そう思っているんじゃないかい?」

「そうそう。」と私。

どんどんラガーマンのペースに引き込まれる私。

「まず僕たちの値段を披露する前に、屋根の相場を教えてあげるよ。屋根にも同じように相場が分かるサイトがある、そのサイトにある数字がこれだ。この数字で計算すると、君の家の屋根は2400sqftだ」と。

「うちの屋根ってそんなに広いの?」

つい口から出てきた言葉でした。

「君の家は平屋で1000sqftくらいだろ?ガレージも入れて、屋根の角度も計算に入れると、だいたいそれくらいの広さになるね。」

へぇ、そんなものか、と私は思っていました。

ラガーマンは見積書を見せてくれました。

そこには3つのオプションが提示されていました。

Aプラン、Bプラン、Cプラン

高いプラン、中くらいのプラン、安いプラン。

すると、妻から一言が。

「一番安いプランで」と。

さすが我妻。

ズバって言っちゃいます。

ややたじろぐラガーマン。

私は妻がいて本当に良かった、と思いました。

ラガーマンは続けます。

まず、料金から伝えましょう。

「安いプランとなると、26,524ドルです」

げ、そんなにするんだ。。。私の正直な感想です。

「ただ、今回は90日以内で契約を決めてくれたら、それが23,871ドルまで下がるんだよ。」

なるほど、ちょっとは下がるのね。

「そして、この値段だと、10年ローンで月々214ドルになるんだよ。この料金って言うのは、払える範囲かな?」

私はただボケーっと聞いていました。

すると反応が良くないと思ったのか、ラガーマンは喋り続けます。

そう、アメリカ人という人種は、沈黙に弱いのです。

沈黙ということは、好ましくない、ということなのですから。

ラガーマンは続けます。

「ただね、今回はコロナで色々と大変なところが多いからね。さらに安くなるんだ。それがね、何と。なんとだよ!16,462ドル。どうだい?」

コロナで下がるって意味がよくわからないけれど、下がるなら良いかっていきなりめちゃくちゃ下がったな。。。。

私はとにかく聞いていました。

「つまり月々で計算すると130ドルだ。26,000ドルが16,000ドルに。月々なら214ドルから130ドルに。悪くないだろ?」

どんどん下がっていく値段。

私は、不信感を募らせていました。

何でこっちが黙っているとどんどん値段が下がっていくんだ。

それなら最初から低い値段を言ってくれよ、と思っていたのです。

やけにしつこいラガーマン。

その後も色々と言ってきては、今すぐに決めろと言ってきます。

しびれを切らした妻はこう返しました。

「私たちは今日は決められません。」

するとラガーマンはこう言いました。

「なら僕らは、一度外に出るよ。夫婦で話し合ってくれ。それと更に値引きができるかもしれないんだ。なぜならお向かいのお家も屋根の交換をするからね。同時にできたら、荷物を運ぶのは一度で済むだろ。」

しつこいラガーマン

ラガーマンとクマさんが外に出ている間。

私は信頼している友人に電話しました。

友人はペンキ業者のため、そういう家関連の相場は大体把握しているからです。

私は伝えました。

「屋根の見積もりもらったのだけど、最初は26,000ドルって言われて」

ヒュー!(アメリカ人は驚いた時にこういう表現をします。)それは結構高いね。その屋根の大きさから考えると高いところでも15000ドル程度になるのでは。自分なら、まずは他の業者からも見積もりをもらうよ、とのこと。

私は電話を切り、妻に友人のアドバイスを伝えました。

「なんか怪しいよね。。。っていうかこの値段の下がり方って何?しかもお向かいさんが屋根の交換するってのも怪しいし。同時にできたら更に安くできるってのも怪しい。とにかく他の業者からも見積もりもらって、それから決めても遅くないわけでしょ。」

ということで、こちらの決意は固まりました。

とにかく今日は決めないこと。他からも見積もりを取ってから決めること。

ドアを開けると、ラガーマンが図々しくもダイニングまで入ってきました。

「とにかく座ろうよ」と。

なぜお前がそれを言う、と思ったのですが。

ラガーマンは言いました。

「いいニュースがあるんだ、今日決めてくれたら、更に3,000ドル安くなるそうだ、本社から了承を得た。」

そんな簡単に3000ドルも下がるか?私たち夫婦は完全にラガーマンへの信頼を無くしていました。

妻は言います。

「とにかく今日はお帰りください。」

ラガーマンは完全に焦っています。

「で、でも!こんなに安くなるチャンスは中々ないんだよ!何より君たちには屋根が必要なんだよ!いくらだったら契約を決めるんだい?」

妻の最後の一撃

そしてなかなか帰ろうとしないラガーマンとクマさんに、妻は言い放ちました。

「私たちは今日は決めません!屋根が必要なのはわかりましたので。他からも見積もりを取って比較して決めます。今すぐにお帰りください!」

すると、ラガーマンは、急に表情が変わったのです。

そう。

それはまるで、ミッションインポシブルで仮面を脱いだトムさん。

仮面の下には完全に別人がいたのです。

今までは僕の胸板は厚いだろ?という白い歯を見せた表情だったのが。

け!こいつら使えないな、というねずみ小僧のような表情に。

私は唖然としてしまいました。

私たち夫婦も、とりあえずは比較のために他から見積もりを取るけれど、途中まではこの会社でいいんじゃない、って思っていたからです。

えぇ、あなたが本当にあのラガーマンなの?と思うくらいの別人です。

気弱な私はこのまま彼らを帰すのも申し訳ないと思い。

帰ろうとするラガーマンに聞きました。

「もしあなたの会社に屋根の交換をお願いするとしたら、どうしたらいいの?」と。

するとラガーマンはやっと彼の連絡先をくれたのです。

それも見積書に殴り書きで「ほらよ」という態度。

私は自分の目を疑いました。

さっきまでの人の良いラガーマンはそこにはいなかったからです。

家のドアが閉められて、彼らの車は去って行きました。

私も妻も車が去るのを見届けました。

妻も興奮した様子で。

「何、あれ?完全に態度を180度変えたよね。ありえない。だって屋根の交換をお願いしないって決めたわけでもなく、他社の見積もり取ってからね、と伝えただけだったのに。」

ねぇ、何だったんだろう。。。

「完全にあの料金はふっかけてたってことよ。ああいう業者は本当に信用できない」と妻。

私は完全に人間不信に陥りました。

最後の最後まで、とってもいい人そうなラガーマンだったのに。

今日は決めない、と伝えただけで、ここまで人が変わるとは。

教訓

皆さんも是非、屋根を交換する機会があれば。

いくつかの業者さんから見積もりをもらうことをお勧めします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。