トントントン

トントントン

ドアのノックが聞こえたのは、とある平日の午前中でした。

私は、こんな午前中に誰が来るのだろうか、と不審に思いつつも、ドアの覗き穴から外を覗いてみました。

すると、工事現場にいるような蛍光色の安全ベストを着たおじさんが立っていました。

その風貌たるや、何か映画で見覚えのある顔だな、と思っていました。

ドアを開けて私は聞きました。

どうかしましたか?

「私はビーバートン市の職員です。あなたの水道のメーターが回り続けているので、それを伝えに来ました。」

あ、思い出した!

ジュラシックパークに出てくる悪いやつ。

恰幅の良いメガネをかけた、ジュラシックパークの悪いやつだ!

お前のせいで、ジュラシックパークは混乱に陥ったんだった!

私は頭につっかえていたことを思い出すことができ、ちょっと嬉しく、その人の話を聞いていませんでした。

え、すみません。もう一度言ってもらえますか?

「あなたの水道のメーターが回り続けていますよ」

え?水道のメーターが回り続けている?どう言うこと?

「おそらく、どこかで水漏れがあるのだと思います。早めに業者に連絡した方がよろしいかと。」

え?いや、確かに雪でパイプが破裂してガレージが大変でしたけど、もうそれは直しました。

「でも、メーターは回り続けていますので、パイプのどこかで水漏れがあるのだと思いますよ。それでは、私はこれで。」

え?なに?あなたはそもそも誰でしたっけ?

「市の職員です。では。」

おじさんは煙のように消え去ってしまいました。

私は、おじさんがジュラシックパークの悪いやつの風貌をしていたので、怪しいと思いました。

でも、おじさんは、何かを売るわけではなく、煙のように消えてしまったのです。

私は考えました。

もしあのおじさんが、悪いやつなのであれば、何かを売りつけていたはず。

はたまた、この後に水道の業者さんがくるはず。。。

でも来ないということは、本当に市の職員で、本当にわが家は水漏れしているのでは、と。

私は改めて会話を思い出しました。

つまりメーターが回り続けているのであれば、どこかで水が漏れている、ということ。

この前の雪のパイプ破裂に続いて?まさか。。。なにも兆候はなかったのに。

とにかく、先ほどのジュラシックパークのおじさんが真実を伝えていたのかどうかを知るために、外にある水道メーターをチェックします。

確かに、10秒に一回程度、水道メーターが動いています。

私は慌てて家の中に戻り、全ての蛇口をチェックします。

特に蛇口から水漏れはありません。

そして外に出て、メーターをもう一度チェックしました。やっぱり動いています。

あのおじさんは悪いやつではありませんでした。

確かにあのおじさんのせいで、ジュラシックパークは混乱に陥りました。

でも、あのおじさんのおかげで、家の水漏れの現状を確認することができたのです。

とりあえず気を取り直して、業者さんに電話です。

もしもし?市の職員と名乗る(ジュラシックパークに出てきそうな)おじさんが来まして、家の水道メーターが回り続けているからどこかから水漏れしているのでは、と言われまして。

「わかりました。それでは、本日中にスタッフを送ります。」

え?そんなに早く来てくれるの?

実際に、3時間後には、業者さんが到着。

「とりあえず床下を見るよ、大抵が床下の水道管とかの場合が多いから」と業者さん。

まじか。床下が水浸しになっていたら、大変なことだ。。。

私は祈るように床下から出てくる業者さんを待っていました。

祈ったところで、事実は変わらないのに、とりあえず祈ります。

床下から出てくる業者さん。

「うーん、床下は問題ないね。」

おぉ!祈りが通じた!

でも、謎は深まります。

床下でないのなら、別のところで水漏れがある、と。

「床下でないのなら、考えられるのは、メーターと家を繋ぐフレッシュウォーターパイプかな。まずはガレージにあるShut off valve(遮断バルブ)を閉めて、メーターが回るかどうかを確認してみようか。」

おぉ!なるほど。さすが業者さん。

確かにそれをすれば、土の中にあるパイプで水漏れかどうかがわかる。

早速実行。

結果:メーターは回り続けていました。

「うん、これはフレッシュウォーターパイプで水漏れだね。メーターとガレージを繋ぐパイプで水漏れ。土の中のパイプだから、結構お金かかってしまうよ。」

え?ざっとおいくらですか?

「正確な見積もりは後で出すけど、そうだな。。。10000ドル(2024年2月の為替で150万円)くらいかな。。。。」

ガーン。。。

何か防ぐ手立てはあったの?

「うーん、ただの老朽化なのでね。」

そうです。ただの老朽化です。

老朽化なので、どうしようもできないことなのですが、家を所有するってこういうことだよね、と改めて痛感したのでした。

振り返り

それにしても、あの市の職員と名乗るジュラシックパークのおじさんのおかげで、水漏れが発見できました。

感謝しかありません。

ジュラシックパークの悪いやつと呼んで、申し訳ありませんでした。

この場を借りまして、謝罪いたします。

続く:次回、修理に来た水道業者さんは若い兄ちゃん編